2002 Summer Up date
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「おばさん。アヤに伝えてください。明日を信じてまってるようにって」
こうしてララは、ボンに乗り南の風に会いにに行きました。それからマッサに何かを頼み、アイに言いました。
「アイ、明日になったら、村の子供たちを広場に集めてちょうだい」
「いったい何をするつもりなんだ?」
「みんなでシャボン玉を飛ばすのよ」
翌日、広場にはたくさんの子供たちが集まりました。そこへマッサがシャボン液を持ってきました。
「ララ、うまくゆくといいな…」
「うん、ボンがまかしとけって言ってたから大丈夫よ」
こうして、子供たちが飛ばすたくさんのシャボン玉は風にゆられて舞い上がってゆきました。
そのシャボン玉を、ボンが次から次へと食べてゆきました。ボンの中にはたくさんのシャボン玉がたまり、ボンの体はどんどんふくらんで、家くらいの大きさになりました。
ボンは空高く上ってゆき、口からシャボン玉を吐き出しました。
その時を待ってたかのように、南の風は温かい風を雲に吹きつけてゆきます。
徐々に雲に裂け目ができ、そこからお日様の光がさしこんできました。その光は、大空を舞うシャボン玉を照らしました。
すると、どうでしょう…
空にはキラキラ輝くシャボン玉が浮かんでいます。そして、赤や黄色や緑の光が、そうです、虹の七色の光が輝いているのです。
地上では子供たちが歓声を上げています。
「すごい、ララはすごいよ…、さあ、サーシャを見にゆこう…。アヤが見たという所に、きっと咲いているよ」
マッサとララ、そしてアイはドキドキしながらその場所へ走って行きました。
「まあ、とってもすてきな花…」
「うん、かわいくてきれいだなあ…」
「虹が出ている間しか見れないからこそ、貴重な花なんだよ。」
そうしているうちに、ボンがアヤを連れてきました。ボンはサーシャの前でアヤを降ろしました。
「アヤ、やっと来てくれたのね。待ってたのよ…」
「サーシャ、ごめんね。でも…もうわたしの目はほとんど見えないの…」
そう言うと、アヤの目から涙が一粒、二粒と流れ落ちました。
「がんばって、アヤ。今、空にはシャボン玉の虹が架かってるのよ。子供たちがそして、ララやアイ、ボンや南の風が、みんな力を合わせて作った虹なのよ。アヤのためにね…。きっとシャボン玉の虹の光があなたの目に光を与えるわ」
「……でも、わたしの目は治らないのよ、もう治療の方法がないんだって…」
「そんなことないよ。アヤ、みんなの気持ちを考えて…。みんなはここにいるのよ。さあ、元気を出して…。さあ、アヤのすてきな笑顔をもう一度わたしに見せてくれない?」
アヤは無理に笑顔を作ろうとしましたが、うまくゆきません。
「アヤ、もう時間がないの…。まもなく虹は消えてしまうわ。そうするとわたしも枯れてしまうの。その前にあの笑顔をもう一度…」
アヤはサーシャに初めてあった時のことを思い出しました。すると、虹のサーシャの姿が心の中によみがえってきました。
「ありがとう、アヤ…。あなたはとってもかわいい…。そしてきれいな紫のひとみ…」
「えっ…むらさき?うそ、わたしの瞳はもう灰色になってるはずだけど??」
「そんなことないよ。わたしにはあの時のきれいな瞳が見えるわ…笑顔の中に見えるのよ」
「ありがとう、サーシャ…」
「アヤ、これから話すことをよく聞いてね。わたしを取り、1枚の花びらを南の風に渡し…それから…それから…そよ川に流してほしいの…、おねがい…」
「いや、そんなことわたしにはできない…!!」
「アヤ、わたしが咲いていられる時はもう終わろうとしているの…今、輝いてる虹の色が消えた時、わたしも枯れてしまう…。あなたの紫の瞳のためにわたしも役にたちたいのよ。さあ、早く…、虹が消える前に…」
「サーシャ、わたしはこのままでいい…。あの時の思い出を大切にしたい…」
すると、南の風がアヤの心にささやきました。
「アヤ…、サーシャの願いはあなたの美しい紫の瞳にあるのです。サーシャはあなたのその美しい瞳を忘れないでしょう。次に咲くサーシャにその思いを伝えたいのです。それがサーシャの願いなのです」
「わかりました。それがサーシャの願いなら…」
アヤはサーシャを取り、その花びらの1枚を南の風に渡しました。南の風はそれを受け取ると大空に舞いあがり、粉々にしたその花びらを、シャボン玉の虹にまき散らしたのです。すると…。
七つの色は紫に変わり、その光はアヤを照らし出したのです。
パッとまばゆい光の中で…、
「あ、この光…」
そしてアヤは、まぶしそうに手を目の上にかざしました。
すると、彼女を取り囲んでいる子供たちが見えてきたのです。
アヤは手に持っているサーシャに言いました。
「サーシャ、わたし…見える…。そして…あなたの姿が…」
「よかった。あなたのそのきれいなひとみが、その紫色が戻ってきた…ありがとう、アヤ…さあ、そよ川にわたしを流して…」
「サーシャ、もう会えないの?…あなたと…」
「アヤ、そんなことないわ…さあ早く…」
アヤはそよ川にそっとサーシャを流しました。
すると、徐々に水の色が紫色に変わってゆきました。
すると、何ということでしょう…!!
川面いっぱいにサーシャが映し出されたのです。
アヤとララ、そしてアイはボンに乗って空中から、その姿をながめていました。
サーシャ…虹とともに現れ、虹とともに消えてゆく不思議な花…、その花が川の流れの中でキラキラ光っています。
そして、輝いていたシャボン玉も消えてゆきました。
それからしばらくたった日の午後のひととき、ララとアイはアヤの家に遊びに来ていました。アヤの部屋の壁には彼女が心をこめて描いたサーシャの絵が飾られていました。
三人はいつまでもその絵を見つめているのでした。
…おしまい